セブルス・スネイプ

その名前を聞いて思い出すのは黒
そして、お母さんのこと



Bit [



魔法薬学の授業ほど静かで、重たい雰囲気の授業はないと思う。魔法史は静かだけれど、どこか落ち着く雰囲気だし、変身術は楽しいから生徒の殆どの顔も明るい。


「魔法薬学ってこんなに静かにするものなのかしら」


気味の悪い色をした液体を鍋の中で混ぜながら、隣でレポートを書いているに聞けば は「うーん」と唸って前を見た。


「きっと、あれのせいよ」


視線を辿れば、から「あれ」呼ばわりされたスネイプ教授が、棚に置いてある試験管を一つ一つ並び替えているところだった。

(几帳面)

確かに、スネイプ教授が居るだけで周りの雰囲気がガラリと変わる。一瞬にして静かになるし、誰一人として話そうとも寝ようともしない。


、手が止まってる!」


の声に止まっていた手を再び動かしながら、スネイプ教授を盗み見た。

(まだ、並び替えてる)




出来上がった薬は煮詰めている時とは正反対の、透き通ったオレンジ色をしていた。 教科書に載っている説明どおりなので成功だ。試験管立てに言われたとおりに置いて のレポートを写させてもらう。

これがグリフィンドールの授業だったら教授はきっと、少しのミスも逃すことの無いように目を見張っているんだろうけど、今ここに居るのはハッフルパフ、加点も減点もなく、教授は次々に置かれていく試験管を見ている。


「ハッフルパフに興味はないって感じよね」
「あんな奴に興味持たれなくていいのよ」


最後に自分の名前を羊皮紙に書いて、スティリッシュ(ルームメイトの一人)がレポートを集めに来た。それと同時に時計の針がカチャリと動いてチャイムが教室に響く。


「レポートが終わっていない者は明日までに出すよう」


そうして、魔法薬学の授業は終わった。



魔法薬学が今日最後の授業だったので、寮へ戻ると後は個々の時間を楽しむ。 はスティリッシュと一緒にハッフルパフのクィディッチの 練習を観に行ったようだ(格好いい人がいるらしい)

そんな時間帯の図書室は人も少なくて静かである。
一番奥の棚に並べられた軽い読み物を窓に凭れ読んでいたら、隣にある棚から本を抜くスネイプ教授が見えた。確か、あの棚にあったのは難しい本ばかりだった気がする。そんなスネイプ教授の姿をじっと眺めた。


(黒を思わせる人・・・)

黒いローブも  黒い服も  黒い髪も  黒い影も
全てが恐ろしいくらい彼に似合っているのだ

そんなことを考えていたら、つい凝視してしまって、教授は私の視線に気づいたのか こちらを向いた教授の顔は少し、驚いているよう見えた、そしてまた本を探しだす。


「・・・その本は」
「え?」
「お前の母親も良く読んでいた」


本を探す手を止めずに淡々と話す教授。と言っても、話したのはその二言だけだったけれど。


――――切り取った小さな妖精の羽根
その本の背表紙を指でなぞって前を向いたら、いつのまにか教授の姿は消えていた。