朝はいつも訪れて
私なんかほったらかしのまま
時間と共に何処かへ行ってしまうんだ



Bit  X



昨日言われたとおり、朝食を済ませてすぐに校長室へと足を運んだ。校長室に入るときの合言葉に少し驚きながら、現れた階段を登る。


「おはようございます ダンブルドア校長」


椅子に座って私が来たのを最初から分かっていたように、微笑んでいる校長の周りに、ズラリと先生達が並んでいた。


「おはよう、良く眠れたかね?」
「はい、おかげ様で」


それは良かった、そう言ってダンブルドア校長はマクゴナガル先生と目を合わせて頷いた。本当は全然眠れなくて、やっと眠りについて数時間後には目が覚めた。


「ミス・ こちらの先生は――――」


マクゴナガル先生が順々にその場に居た先生達の名前と、担当の教科、寮の説明をしていく
(占い学の先生は物凄く個性的・・・)


「そして魔法薬学を担当しておられる、セブルス・スネイプ教授」


一人だけ、どこか雰囲気の違うセブルス・スネイプは無表情のまま私を見た。目が合い軽く会釈をする。


「・・・お願いします スネイプ先生」


スネイプという名をお母さんじゃなく私が口にするなんて

(思いもしなかった)



* 



「今日は一時間目から魔法薬学よ、最悪!!」


地下への階段を溜め息を吐きながら下りるに苦笑いで返し、手に持っていた教科書を開いて眺めてみる。


「良かった、内容はあまり変わらないわ」
は魔法薬学、得意?」
「嫌いじゃないけれど、得意ってわけでも・・・」


魔法薬学よりも魔法史の方が苦手だ。眠くなるし、テストの時は中々覚えられなかったし。


「先生が最悪なのよ!なんてたって・・・っ」
「スネイプ教授のこと?」
「そう! スリザリンの寮監で贔屓ばかり」


見た目からしてスリザリンって感じだったから、寮監だということに驚きはしないけれど 贔屓っていうのは何とも子供らしい。

(・・・変な人)




初めての授業は何も問題なく終わったけれど、 が言っていた通り、あの男の授業は凄かった。たった一時間の授業で15点も減点されるなんて、可哀そうなグリフィンドール。


「あ、そうだ。お父さんにまだ手紙を送っていなかった」


部屋に手紙をとりに戻るために、大広間へと行く生徒達の中を小走りで抜けて、やっと寮の扉の前へと来た時、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。驚いて勢い良く振り返る。


「・・・教授」


黒いローブを翻す姿は一羽の美しい烏を思わせる。足音が床から壁、壁から天井へと響いていった。


「校長が探していた、早く行きたまえ」


何かしてしまったのだろうか、考えていたらスネイプと目が合った。私が校長室へと向かうまで動かないつもりなのか、目を逸らすことない。その顔はお父さんに見せてもらった写真より、もっと不機嫌で、無表情。

(何で笑わないの)
(貴方はいつまでも写真の中のままみたい)


「何をしている早く行け!」
「あ、すみません・・・」


俯いたまま廊下を早歩きで歩く。ある程度離れた場所で、顔を上げ振り返ってみたら黒いローブが翻る後姿が見えるだけだった。


(貴方のお父様は、お母さんに笑ったのかしら)


私には分からない過去の出来事を、教授、貴方は知っているのですか?







哀しくも美しき少女の呟き