ローブがはためく 真っ黒なローブが Bit W 「・・・魔法薬学を担当している」 魔法薬学、見た目は黒魔術に対する防衛術って感じなのに 「セブルス・スネイプだ」 私を睨むように言うと、その人は廊下に響き渡る足音をたてながら、その場を去って行った。その音が遠ざかって、聴こえなくなってしまっても、私はその場に立ち尽くしたまま、はためくローブの残像を見ていた。 「スネイプ?」 あの日、お父さんに見せてもらった写真を思い出して、あの一家の主に、どことなく似ているも気がした、それよりももっと似ていたのが。 『・・・この人は』 『子供だよ、今は僕たちと同じ歳くらいかな』 そう、微笑むことなんて全く知らない環境で育ったのだろう、その顔に笑顔なんて僅かにも浮かばせず、むしろ全てを鬱陶しく思い、睨みつけるような黒い瞳。 (間違いない) 断言できる証拠なんて何一つないけれど スネイプという名前 あの黒い髪 睨みつける瞳 「あの人が」 あの人が私と血の繋がりのある、あの一家の子供、私の兄にあたる人。 あの出来事から逃げようと、離れようと来たこの場所で、まだ私にまとわりつく忘れたい記憶と、見えない糸が絡まってしまった、何かの繋がり。 「・・・どうか」 どうか、気付かれませんように。もう、これ以上、あんな思いはしたくないの。 私が校長室に行くのに時間が掛かってしまったためか、今日は寮に帰って良いことになった。その代わり、明日朝一番にダンブルドア校長を訪ねないといけないらしい。教えてもらった合言葉で寮に入って、すぐに部屋へと向かった。 「!」 「・・・?」 部屋に入るとがベッドに座って他のルームメイトとお菓子を食べながら楽しそうに話していた。 「私達 同じ部屋みたいで良かったわ!」 「そうなの? 私も嬉しい、ちょっと不安だったの」 に手を引っ張られ他の人達が次々に自己紹介をしてくれた。みんなみたいに優しい雰囲気で、さっきまでの不安も何処かへと行ってしまった。一通り話し終わると一人、また一人と眠りに落ちていく。私だけがベッドの上で、窓の外を見ながら起きていた。 ちょうど今日は満月で、灯を点けなくても充分明るい。暗闇に溶ける雲や月を見ながら、黒い髪を持つ母のことと、セブルス・スネイプ、彼のことを思い出した。 睨みつけるような眼は、全てを否定しているよう 風にはためく真っ黒なローブが 見る者に良い印象なんて与える分けなくて あの愛想の無さを見ても、きっと生徒には好かれるような教師じゃない 私は変な態度をとってないだろうか、ホグワーツに来た理由を探られたら知られてしまう。 曖昧な立場を拒んで、自分でもどうして良いのか分からない私に、この場所を去ることは今はまだ出来ない。 「・・・・あの人は気付いてないから大丈夫」 呪文を唱えるように呟いて、ベッドに潜り込んだ。 <|◇|> 大丈夫、大丈夫 この不安も眠りに溶けてしまえ |