Bit V 3 祖母はそれは嬉しそうに笑った。母のことを酷く言っていたのは、最初のうちだけで、私がの家から離れることに納得し、別にずっとイギリスに居ても構わないと、故意に私に聞こえるような声で言う。 (・・・いい年した大人が何をやってるのだろう) ソファに座ってホグワーツの話をする父に耳を傾けむずに、楽しそうに庭で母と遊ぶセシィを眺めた。羨ましいとは思わない、ただお母さんに対する疑問が消えないだけ。 何に怯えて、 私を拒絶して、 謝って 私のほうが椅子に座って紅茶を飲んでいる祖母に怯えたい気分だ 「?」 「あ、ごめんなさい 私 明日の準備があるから部屋に戻るわ」 荷物をまとめて殺風景な自分の部屋の窓から空を見上げる。明日からフランス語を話さなくていいと思うと、気持ちが少し軽くなった。そうだ明日目が覚めれば私は此処には居ない。 「 ちょっといいかい?」 部屋のドアをノックして父が片手にアルバムを持ち部屋に入ってくる。もう何もない部屋だから、2人で床に座ってそのアルバムを広げた。 「・・・誰の?」 「ティナスの学生時代のものさ」 写真の中で若いお母さんがホグワーツの制服に身を包み笑っていた。 「お母さんホグワーツの学生だったんだ」 ページを捲っていくうちに一枚だけアルバムには飾られずに、ページの間に挟まれた写真が出てきた。 大きな屋敷の門の前で大勢の使用人、そしてその家の一家だろう。黒い髪をしたその家族に笑顔など窺えず、そんな中、黒い髪を風に揺らしながら笑う一人のメイドの姿が一際目立っていた。 「これ」 「お母さんが働いていた時の写真だよ」 「この人」 笑っているそのメイドを指差すと、お父さんは頷く。そうだよ、お母さんだ。そう言って、ある人物を指差した。 「この人が、お母さんの大切だった人」 黒髪で笑顔も無い、この家の主人、お母さんが恋に落ちた相手。そして、 「・・・私の、父親?」 「この一家の主人はとても有名でね、ホグワーツでも常に首席だったらしい」 自分の黒髪がとても憎らしかった。お母さんとも、この写真に写る主とも同じ黒髪。 「・・・この人は」 「子供だよ、今は僕たちと同じ歳くらいかな」 話を聞いていくうちに、私と血の繋がった父親に当たる人物が、今では結構な歳だということが分かった。それでも写真を見る限り、実際の年齢よりも若く見えるので、写真のように今でも充分、整った顔をしているのだろう。 「お母さんって年上がタイプだったのかしら」 「どうかな、僕も分からない」 苦笑いしながらアルバムを閉じる父と笑い合う。 「あ、ねぇお父さん」 「うん?」 「その人の名前、なんていうのか分かる?」 哀しそうに微笑む父を見て、後から自分が言ってしまったことに罪悪感が湧いた。別にその人を私の父親だとは思いもしないし、イギリスに行って探すわけでもない、ただ知りたいだけ。 「ファーストネームは分からないけれど」 「ファミリーネームだけでも構わないわ」 「確か、ミスター・スネイプ、だったかな」 これが私のプロローグ <|◇|> I was in memory a bit. |