私はね 破片だったの 崩れかけていたのではなくて 崩れていたのよ 粉々に Bit V 「貴女を もう 愛せない」 まるでそれは何かの呪文のように私の体を縛り付けて、この場から逃げたいと、でも目の前にいる母の肩に触れたいと、頭の中で渦巻いているのに、ただ呆然と立つことしか出来なかった。 「・・・、こっちにおいで僕から話すよ」 辛そうに顔を歪ませたお父さんはお母さんをソファの上に座らせて、私を隣の部屋へ呼んだ。今の状況を全く把握できない私の肩をそっと引き寄せて、隣の部屋へと入る時、二階からセシィが降りてくる足音が聴こえた。 「ティナス、セシィと遊びに行ってきなよ。外も良い天気だ。」 先程まで泣き崩れていたお母さんの表情が、セシィが来た途端明るくなって優しくセシィの手を握って外へと出て行った。まるで何もなかったように。 「・・・私は、もうここに居てはいけないの?」 「どうしてそう思うのかな、」 「理由はないけれど、そう、思ったの、だってお母さんは私にああ言ったわ」 あのお母さんの様子を見た瞬間、何かが割れる音と、破片が散らばる音が聞こえた気がした。 外を歩く2人の後姿がひどく懐かしく感じる、お父さんが椅子に座るのに気付いて私も座った。 不思議と、こんな状況でも落ち着いて冷静でいられる自分に驚いた。 「お母さんがね僕と結婚する前のことなんだ、聞いてくれるかい?」 ゆっくりと話し出したお父さんを見ながら頷いた。 お母さんが、ある屋敷の使用人をしていた頃、その家の主人と恋に落ちた。恋に落ちたと言っても、相手には妻も子供もいて、お母さんは世間一般に認められない関係を主人と続けた。その関係を絶った後、出会ったのがお父さん。 「ねえ お父さん 要するに私は、お父さんの子供じゃないってことなのでしょう?だから、私を愛せないって、お母さんは言ったのでしょう?」 「・・・」 「お母さんは一体何に怯えているの?私は、どうして良いのかまだ分からないの」 私がお父さんとの子供じゃないと分かっていながらも、今まで育ててきたお母さんは、どうして真実を知られてしまった今、私に愛せないと言ったのだろう。 「これはね私の自惚れかもしれないけど、私、父親が違っていてもお母さんもお父さんも愛してくれると思ってたんだ」 目の前でお父さんが瞳に涙を溜めて私の手を握った 「もちろん、君を愛しているよ」 丁度、玄関が開く音がしてセシィが私の名前を呼びながらリビングへと入ってくる。私達がいる部屋に入ってくると、お父さんの様子がおかしいことに気付いて、不思議そうに首を傾げる。その後ろでお母さんが私を見ていた。 お母さんの黒い髪が風に揺れるのを見て、私がお父さんの髪の色に憧れていたことを思い出す (今でも やっぱり憧れるよね 淡い優しい金色の髪) 「お母さん」 愛してくれる人がいたのだけれど、まだ幼い私には此処が息苦しくて。此処から離れるために思いついた術は、これしかなかった。 「私ねお父さんと話し合ったの」 嗚呼、何で私はこんなに冷静でいられるんだ。頭の隅では色んな感情が渦巻いていると言うのに。 「イギリスに戻って ホグワーツに通うことにしたから」 微かに風に乗って聞こえた言葉を忘れたかった 「ごめんね 」 <|◇|> We don't like it a bit. |