強いて言うなら、そうね、
黒って
あまり良い印象はないわね
Bit U
もうすぐ大広間で夕食が始まるらしい。ボーバトンの制服からホグワーツの制服に着替えて、マクゴナガル先生が呼びに来るのを扉の隣に立って待っていた。扉の向こうでは生徒の賑やかな話し声が聞こえる。
「赤と金がグリフィンドール
緑と銀がスリザリン
黄色と黒がハッフルパフ
青とブロンズがレイブンクロー」
ネクタイの色ならどれが私に似合うのだろう。
クィディッチの応援ならどの寮を応援したいだろう。
「勇気溢れるグリフィンドール
狡猾なるスリザリン
忠実なハッフルパフ
賢いレイブンクロー」
だんだんと、この中に私に合う寮がない気がしてきて思わず溜め息が出た。
「ミス・ 入りますよ。私に着いて来なさい」
大広間の天井に見惚れながらノロノロと中に入っていくと室内が少しざわめいた。
(転入生なんて珍しいよね)
マクゴナガル先生が止まるのを確認して私も止まる。目の前に居る生徒達の視線が自分に集まって、私の鼓動が早くなる。
「彼女は・ ボーバトン校からやってきた」
ダンブルドア校長が淡々と話を続けていく中、私はまだ頭の中でどの寮になるのかばかり考えていた。
「ミス・ 早くこちらに」
マクゴナガル先生の声に気付いてポツンと一つ用意された椅子に座るように促された。頭に乗せられた帽子が、何かブツブツ言っているのが聞こえてきたから、ちょっと怖いなぁなんて思ってみたり
一瞬、呟きが途絶える。
(・・・どうしたのかしら)
「ハッフルパフ!」
いきなり大きな声をだすもんだから心臓が飛び跳ねた。
私が席に着くのと同時に、ダンブルドア校長の一言でテーブルに料理が現れた。中にはフランスでは見ることの出来なかった料理もあったから、思わず顔が綻んだ。ああ、此処はイギリスなんだって。
「ミス・ 初めまして 私 ・ローゼン」
隣に座っていた暖かい黄色の緩いウェーブのかかる髪の女の子が、突然、話しかけてきたので、手に持っていたナイフとフォークを置く
「初めまして、ミス・ローゼン」
「あら、でいいわ」
柔らかく、そして暖かく微笑む彼女を見て、ハッフルパフって、この子みたいな寮かもしれないという考えが頭をよぎった。それに比べて私とくれば
黒い髪はのように綺麗に輝かないし、
ましてや黒いローブに黒い髪じゃ印象があまり良くない気がする。
(黒い髪、か・・・)
「どうしたの?ミス・」
「気にしないで。ああ、それと、私もで構わないわ 」
ふわふわした髪を揺らして微笑むが少し羨ましかった。
夕食を食べ終わった後、学校の説明を受けるために校長室へ行くことになり、と別れて、教えてもらったとおりの道順で廊下を歩いていた。
「それにしても、広すぎるわこの学校。まるで迷路みたい。」
ポツリと漏らした言葉が思ったよりも廊下に響いて、周りに誰も居ないだろうかと振り返ってみる(誰も居なかったのだけれど)
「ミス・」
後ろには人が居なかった、後ろには。突然目の前に現れた、見た目からして生徒ではない魔法使いに驚く。
「・・・な 何でしょう」
「それはこちらの質問だ ここで何をしている」
黒い髪を隙間風に揺らせ黒いローブをはためかせている魔法使いが、どこか自分と被ってしまい、私も周りから見るとこういう感じなのだろうかと、返事をすることも忘れて考えていた。
「返事をしたらどうだ」
「あ、すみません 校長室に行きたいのですが」
行かせていただけませんか、とどんどん声が小さくなりながらも答えた。この男が自分の目の前から動かなければ、私も前へと進めないのだ。男が避けるのを確認して前へと一歩踏み出して、もう一度男の顔見る。
(黒はあまり良い印象を与えないね)
「失礼ですが 教師の方ですか」
眉間の皺が少し増えた気もして、やはり失礼だったのかと不安になった。
「・・・魔法薬学を担当している」
魔法薬学、見た目は黒魔術に対する防衛術って感じなのに。
「セブルス・スネイプだ」
「え?」
あの日の出来事がフラッシュバックしていく。
<|◇|>
She was every bit surprised.
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