「貴女が・ですね?」
突然名前を呼ばれて振り向いてみると、背の高い魔女が微笑みながら立っていた。
Bit T
二日前、フランスにあるボーバトン校からホグワーツに転入するために、イギリスへとやって来た。元々イギリス出身の私は英語の方が話しやすくて、フランスに5年間程住んでいたというのにフランス語はぎこちないまま、ボーバトン校での日々を過ごしていた。
「ホグワーツの教頭を務めている ミネルバ・マクゴナガルです」
「あ、宜しくお願いします」
漏れ鍋でココアを飲みながらホグワーツからの迎えが来るのを待っていて、来るのは普通の先生だと思っていたのにわざわざ教頭が来るなんて思いもしなかった。
荷物は全部、寮の部屋へと送っているので、後は私がホグワーツへと向かうだけだ。マクゴナガル先生に連れられて着いたのは一見普通の家。何だろうと疑問に思いながら家の奥へと入っていくとマクゴナガル先生はドアの前で止まって、私に隣に来るように促した。
「移動キーの使い方は知っていますか?」
「一応、知ってます」
ドアノブについている《ノックをして》というプレートがどうやら移動キーらしい。マクゴナガル先生と一緒にそれを掴むと身体が前へ前へと吸い込まれていくような感覚に襲われた。この感じは前からどうも苦手だ。
風景が変わって、さっき居た家とは全く違う家具や小物が並べられている部屋に着いた。あの移動キーはこの部屋に繋がっていたのか。ふと横を見るとマクゴナガル先生と目が合い、先生は微笑みかけてくれた。
「おお、君が・か 待たせてすまなかった」
部屋の奥から白い髭を長く伸ばした老人が姿を現した。蛙チョコに付いてくるカードの1枚に
いる人物。
「アルバス・ダンブルドア・・・」
思わず口からこぼれ出た言葉は訂正するにはもう遅くて、この学校の校長を呼び捨てにしてしまったことにマクゴナガル先生に注意されたのは言うまでもない。
「わしのことを知ってくれているとは嬉しいことだ さあ、座りたまえ疲れておるだろう?」
丁度後ろにあったソファに腰をかけてダンブルドア校長の方を見た。優しい瞳と、笑みを浮かべた顔。こんな穏やかな人が例のあの人に匹敵するなんて思えない。
「まず、ようこそホグワーツへ。 久しぶりのイギリスはどうだったかのう」
「懐かしいです、周りにいる人たちの殆ども英語だし落ち着きます」
そうだ此処は落ち着く。フランスに居た時も確かに楽しかった。学校でも、フランス語を上手く話せない私に友達は合わせてくれたし、何不自由なく過ごしたと言っても過言ではない。
「私は何処の寮に入ることになるんでしょうか?」
「後に分かる 楽しみにとっておくといい」
グリフィンドールにスリザリン、ハッフルパフとレイブンクロー
どれも魅力的だと思う。スリザリンは人の好みにもよるけれど。
私が入る寮はどれになるのだろうと、校長室を出て案内された小部屋の窓から、クィディッチの練習をする生徒達を見ていた。
(大丈夫。此処から、歩き出すことが出来れば、あの出来事も忘れられるはず。)
<|◇|>
You seem a bit tired.
|