スネイプとティナスの関係、学生時代の同級生。 それだけ、傍から見れば只それだけなのだ そう傍から見れば Bit V 「旦那様が亡くなってから月に一度だけ此処に来ているの」 去年死んだのは自分の父親にも関わらず、スネイプは一度も花を置いたことがない。それに対してティナスは、毎月一度だけ白い花を手に、この墓へ足を運ぶのだ。幸いフランスからイギリスまでの距離はそう遠くはない。ましてやティナスも魔法使い。多少長い距離もマグルとは違い早く移動できる。 「お前も家庭を持っているのだろう、いい加減止めたらどうだ」 「お世話になっていた方ですもの。ランタナも分かってくれてるわ」 死んだ男のもとへ月に一度、足を運ぶ妻に何も言わないティナスの夫、ランタナは、自分の父親とは違い、穏やかで、物静かな人間だと、スネイプは随分と昔に一度だけ目にしたことのあるランタナにそういう印象を持っていた。 「娘がホグワーツに来たが」 「でしょう、ハッフルパフに入ったのね。私と同じスリザリンかと思ってたわ」 「何故、わざわざイギリスに。 ボーバトンで充分だろう」 ティナスの笑みが消える、しかしその表情はスネイプからは見えない。 何故、わざわざイギリスに?その答えはスネイプ自身も深く関係していること。隣で笑うこともなく、自分を見下ろしているスネイプを見上げれば、まだ自分がスネイプ家の屋敷で働き始めた頃、良く見ていた彼の父親が頭を過ぎった。 容姿は似ている、黒い髪も、無表情で鋭い声も だけど、瞳だけはあの人に全く似ていないのだ。黒い目に映るものは、様々な彼の過去。目の前にいる自分は全く映ってはいない。それとは違い、あの人はいつも瞳に私を写していた。 旦那様の、珍しく微笑む姿が嬉しくて、喉の奥で鳴る低い声が愛しかった。 「私、今でも旦那様のこと愛してるわ」 自然と口から出た言葉にティナスは苦笑いをして立ち上がり、スネイプの名を呼ぶ。 「当然ランタナのことも愛してる、こんな私を愛してくれた人だもの。私は幸せ者よ。」 「サンビタリア、一体何が言いたい?」 「何も。 ただ、愛したいのに愛することができないのは辛いことねセブルス」 それじゃあ機会があればまた会いましょう。そう言って歩き出したティナスの後姿を、スネイプは最後まで見送って、相変わらず掴み所の無い彼女を理解できなかった。 切なる喜びの名を持つ女。彼女の喜びなど分かることなど到底無理で、とうに死んだ人間を今も尚愛していると言う彼女は何も言わない。だから不変のまま。 のことも、己のことすらもスネイプはまだ何も知らない。 「!大変だわっ」 ハッフルパフの談話室にの声が響く。何事だと振り返ってみれば眉間に皺を寄せ、難しい顔をしているがいた。どうしたのか聞いてみると大きな溜め息が聞こえる。 「魔法薬学のレポートの提出が今日なの」 「それは大変ね、はもう出した?」 「・・・・終わってはいるのだけれど」 それなら何をそんなに悩んでいるのか、全く分からない。首を傾げの手の中にあるレポートを読んでみても特におかしい部分もない。むしろ完璧だ。 (なにが大変なのかしら) 「スネイプが今さっき帰ってきたみたい」 「そういえば教授、今日は出かけていらしたわね」 「今からレポートを提出しに、スネイプの所まで行かないといけないの」 そこまで聞いて、やっとが何に対して困っているのかが分かった。 スネイプ教授のところへと自分で足を運び、地下の部屋へと行かなければならいのだ。けれど自ら進んで其処へ行く生徒などスリザリン以外にいるわけもなく、誰が全員分のレポートを出しに行くか皆で悩んでいるらしい。 (そうね、できれば私もあまり行きたくないわ) 正直なところ、温室で教授に会って以来少しだけ不安だった。あの人が知っている過去の出来事と自分が、彼の中でリンクしてしまったら今ここで過ごす平穏な日々が変わってしまいそうで、それが嫌なのだ。 (だから、どうか知られませんように) 大丈夫、教授は知らない、過去の出来事しか知らない 「だからゲームで公平に、負けた人が行くことになったから、も当然参加ね!」 「そうね、それならしょうがないわ」 何が起こるかなんて知らずにカードをめくる 私はまだ何も知らない。 <|◇|> 2人の時間軸。 |