「セブルス知ってる?ホグワーツには秘密の部屋があるんだって」 「あとはね、梨をくすぐったら厨房へ入れるのよ」 SHE→HE→Medicinal herb ホグワーツから少し離れた森の手前に薬草が生えている。 あのセブルスがローブを脱いで、腕まくりをして、薬草を摘む姿を、見たことがあるのは私しかいないはず。迷惑そうに顔を顰めたセブルスに、無理矢理、ついて来たんだから。 薬草なんて私が見れば雑草と見分けがつかないくらい、平凡で普通の植物なのにセブルスには分かるらしい。どれがどういう薬草で、どれが雑草なのか。彼の目は魔法みたいだ。 「セブルス。ホグワーツってマグルが見れば廃墟みたいなんだって」 「叫びの屋敷には狼男がいるって噂知ってる?」 「マルフォイ先輩って絶対サディストだよね」 「五月蝿い」 セブルスは薬草を摘む手を止めて、木の幹に座る私を見た。少し汗をかいた額、長い前髪をあげようともしないので、目にかかって邪魔そうだ。ヘアピン、似合うかしら、なんて思っていることを彼が知ったらもっと不機嫌になるだろう。 「薬草は見付かったの?陽射しが強くなってきたし、少し休んだらどう?」 私の言葉に耳を傾けていないというより、むしろ私の存在を無視しているセブルスはローブを片手に私が座っている隣の木の幹に座った。 (私の横にくればいいのに) 「この調子じゃ夕方までかかりそうね」 木陰に座っていも、尚辺りを見回して薬草を探しているセブルスを見て思わず笑ってしまった。本当に、この人は真面目だと思う。私も見習いたいくらいだ。 「私も手伝おうか?座ってるだけじゃ少し退屈」 涼しい木陰から陽の射す草むらまで足を運ぶと、まだ何もしていなのに額に汗がうっすらと浮かんだ。こんな中ずっとセブルスは集中して薬草を探していたなんて、ローブを脱ぐのも納得できる。 「、もういい」 「私も一応は薬草くらい見つけられるよ」 「そうじゃない」 セブルスが地面に置いた私のローブを手に取って、すたすたと校舎の方へと歩き出したから、急いで追いかける。 「もういいの?」 「いい、見付かった」 「ああ、そういこうと。 あ、ありがとローブ」 ローブを受け取ってセブルスが見つけたという薬草をみれば、普通の緑色をした雑草と何ら変わりない草だった。 「セブルス知ってる?校長室の合言葉って校長の好物なんだよ」 「マルフォイ先輩はサディストだけど、レギュラスはマゾヒストと思うのよね」 「セブルスは分からないわ、だってそういうこと感じさせないし。貴方はどっちかしら」 「」 「何?」 「少し静かにしろ」 そう言って私より半歩前を行くセブルスが前髪を邪魔そうに、左手で軽くかき上げる仕草に思わず目を奪われてしまう。 「それじゃ、最後にお喋り好きの私からセブルスに一言だけ言わせて」 「手短に言え」 「貴方のことが凄く好き」 歩く足を止めたセブルスの前を今度は私が半歩先に歩いて、セブルスの長くて黒い前髪をそっとかきあげた。彼は驚いたような顔をして、すぐに私の手を払いのけた。心なしか歩く速度が遅くなった気がする。 彼の興味の対象が雑草か何だか分からない薬草から、私に移る日が来るまであと少し。 << ある休日の昼下がり 08/08/04 加筆修正 |