Forget-Me-Not ポッターの手紙を受け取った日から私は、何処か目的地があるわけもなく、ただひたすら、シリウスが此処に居る、生きているという事実が欲しくて、何処に行けば良いのかも分からずに彷徨った。そんな中頭に浮かんだのはホグワーツ。 ホグワーツに着いて、真っ先にグリフィンドールの寮に向かったけれど、合言葉が変わっていて、中には入れず途方にくれているところにダンブルドア校長が現れたのだ。校長は私をこの家に帰し、あの日以来何度も足を運んでは、私の様子を見に来ている。 シリウスが死んだあの日のままのこの家の中で、現実を拒み続ける私がこうやって生きているのは、きっとダンブルドア校長のおかげだ。 「このままの状態で此処に居続けていたら君は! 」 「ルーピン先生、私今日は疲れたから帰っていただけませんか」 「、君がいくら今を拒んでも、もうあの日は来ないんだよ」 「ごめんなさい、もう、本当にもう疲れてしまったの、」 あの日倒れた廊下は冷たくて、事実を拒否する私に現実を突きつける。 静かになった家の中に風が舞い込んでカーテンが波打つ。いつの間にか眠ってしまった私の頬に涙が流れていた。 「ルーピン先生、は私が帰ってて言ったんだっけ」 すっかり細くなってしまった頼りない足で立てば体はふらつき、視界は霞む。 「もうあの日はこない、か」 カーテンを開けて窓の外を見ると、荒れた庭が広がっていた。 「私は あの日のままなのに」 季節はどんどん変わってしまう。 「ねぇ、シリウス」 「忘れることの出来ない私を許して」 荒れた庭に咲く色づいた花が、頷くように風に揺れた。 ずっと、ずっと此処で、来るはずがない貴方を待っていました。 << ああなんて残酷で残虐な悲劇 |