「ルーピン!」 「嫌だな。リーマスで良いのに」 「絶対いやよ」 7 杯 目 これで5回目だ、私の大好きなココアを談話室のカーペットにこぼしたのは。 一口飲んでテーブルに置いたマグが突然浮かんでカーペットに落ちた。振り向くと浮遊術の練習をしていたルーピンが故意ではないと首を横に振るが5回も重なれば新手のいじめだ。しかも後ろでその様子を見て笑っているポッター達にも悪意じゃないが、それに似たものを感じる。 「、私先に大広間に行ってるわ!」 「分かったわ、あまり怒っちゃだめよ」 一目で怒っていると分かる形相で談話室を出た私に、太ったレディが「どうしたの、そんな恐い顔をして」と言ったことに気付かないふりをして階段を駆け下りる。 運良く階段の気まぐれに付き合うこともなく、すぐに大広間に行けた。まだ誰も来ていないグリフィンドールのテーブルの一番前に座る。この席が一番好きだ。教員席に近いということは先生達と話す機会がある。授業中では話せないことも夕食の時間だったら話すこともできる。、例えば、勉強以外のこと、何が好きだとか、あれが嫌いだとか それが結構楽しくて、いつもこの席に座る。 「今日は来るのが早いのですね ミス 」 誰も居ないと思っていたらマクゴナガル先生が後ろから突然現れた。 「マクゴナガル先生?」 突然のことに驚く私を見て、マクゴナガル先生は何か思いついたのか、少し待っていなさいと告げると大広間から出て行った。 夕食まであと二十分 飲めなかったココアは5杯分 数分経っても他の生徒はまだ来る気配はなく、何回も時計を見た。丁度その時、扉が開く音がして振り返ってみると、先程出て行ったマクゴナガル先生が、マグカップとシュガーポットを乗せたお盆持って私の方へやって来た。 「それは?」 「貴女も一緒にどうです?」 目の前に置かれたのは、飲みたくてしょうがなかったココアだった。私の前に座ったマクゴナガル先生にお礼を言って、マグカップを受け取る、ココアの甘い匂いに自然と顔が緩んだ。 「嬉しそうですね」 「ココア飲みたくてしょうがなかったんです。談話室で飲もうとしていたら、浮遊術の練習をしていたルーピンたちの被害にあってしまって、5杯分損しました」 それは災難でしたね、そう言ってマクゴナガル先生はシュガーポットから角砂糖を4個マグカップに入れた。 「そういえば、ルーピンのことをリーマスと呼ばないのはグリフィンドールでは私以外殆どいないんですよ。」 「あら、何故ファーストネームで呼ばないのです?」 「好きな人の名前を呼ぶのって、そうね、結構勇気がいるものよ。ねえリーマス>」 マグカップが落ちて割れる音が大広間に響いた。私は笑顔で自分のマグを口元に運ぶ。 「マクゴナガル先生はココアにも珈琲にも紅茶にも、砂糖は1個しか入れないのよ」 目の前に居るのはマクゴナガル先生ではなく、苦笑いをするルーピンだった。 「まさか君にばれるとは思わなかったよ」 「談話室で飲んだ5杯目のココアの味がいつもと違ったのよ。どうせ貴方達の仕業だろうと思ったけど、まさか貴方がマクゴナガル先生に見えるなんて。一体何の薬を入れたの。」 「ジェームズとシリウスだからね薬なんて入れたのは。僕は知らなかった。君がいきなり僕をマクゴナガル先生なんていうから驚いたよ」 「あの二人ならやりかねないわね」 ルーピンは呪文を呟いてマグカップを元に戻して小さく笑った。私は最後の一口を飲み終わると、マグカップをお盆の上に置いて席を立った。君にばれると思わなかった、その言葉が気に障るけれど、それよりも今は7杯目のココアだ。5回もチャンスを逃したのだ、あと一杯くらい良いだろう。 「何処に行くの、」 「ココアが飲みたいと思って」 談話室まで戻るのは面倒だけど、ココアを飲むのならそこまで行かないといけない。大体、ルーピンはあの短時間でどうやった談話室からココアを持ってきたのだろう。 「それならいい所があるよ、教えてあげようか?」 「どこ」 「でもその前に 、教えてよ」 私を見上げながらいつもの笑みを浮かべるルーピンから目を逸らした。ルーピンのこの何でも見透かしたような笑顔は苦手だ。席を立って私の名前をもう一度呼んだ彼を軽く睨み付けた。 「僕のことが好きって本当?」 「私はココアが飲みたいの」 「知ってる」 「はやく教えなさいよ、リーマス」 私の7杯目の正直 << 好きな子ほどイジメタイ 狼、恋をする 2008/08/14 加筆修正 |