「ほら、俺についてくれば良いって」
「誰があんたなんかに!」


今日も俺の耳に、彼女の言葉が響いた。




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階段が動いたり止まったりしてる中、私は何回上ったり下りたりしたんだろう。ああ、きっと10往復はしている。


、見てるこっちが恥ずかしい」
「そう思うなら、ビルがどこかに行けば良いじゃない」


廊下から私に声を掛けてきた赤毛のポニーテル、ビル・ウィーズリーは軽く溜め息を吐いて、「行かないよ」と呟いた。


「暇な人ね貴方って」
「君を見てると結構面白いよ」
「馬鹿みたい」


階段がまた動き出して、今度はビルがいる廊下へとガコンっという鈍い音を響かせながら止まる。


「俺もそっち行っていい?」
「勝手にすれば」


足を止めてビルの方を見れば、一段ずつ抜かしてあっという間に私の3段上へとやって来た。目が合って笑いかけてきたから無視して一段下りる。


「そんなに俺のこと嫌い?」
「ええ、大嫌い」
「俺は好きなのにな」


そう、こういうところが嫌いなのだ。馬鹿にされている気がして、気に障る。


、耳赤いよ」
「赤くなんかないわよ」
「赤いって」


手すりに頬杖をついて笑いかけてくるビルは容姿的には格好良いのだろう。でもやはりビルの冗談が気に入らない。いつもビルを目で追いかけている自分のファンに言ってあげればいいのに。


「本当に、馬鹿みたい」
「何が?」


「あんたの冗談、私嫌いだわ」


面食らったように目を丸くしたビルの顔が可笑しくて見て思わず笑ってしまった。一瞬の間の後、溜め息を一つ吐いてビルが口を開いた。


「やっぱ俺、のこと好きだな」
「私はビルが」
「好き?」
「大嫌い」


階段を駆け下りて適当な廊下に足をつけたら、ビルが後ろから私の頭に手を置いて軽く叩く。


「顔をそんなに真っ赤にした人が言う台詞じゃないね」
「真っ赤になんかしてないわ!」


頭に置かれた手を払ってビルを睨みつけても、ビルは笑ったままだから、やっぱり気に入らない。


「なに笑ってるの」
「いや、可愛いなって思って」


今日も私の耳に、彼の嘘が響いた。


「嘘じゃないって言ってるのに」
「頭に手置かないでよ!」





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嘘なんかじゃないのに、って何回言っても
素直じゃない君は信じてくれないんだろうね



08/08/14 加筆修正